深谷 敏雄 著「日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族」を読んで
信州上田之住人和親随筆
平成27年(2015年)3月5日
本書を一晩で一気に読んで、感動のあまり何度も泣いた。ユン・チアン著のワイルドスワンに匹敵す名著である。是非に多くの日本人に読んでもらいたい。著者のお父上の義治さんが私の父の一つ上で、私の兄弟は著者兄弟と同年代である。その上、私の父母と上2人の兄達も中国から壮絶な引揚者であった。したがって個人的にも、この本の内容は他人事とは思えなかった。日中関係で闇に葬られてしまいかねない現代史をよくぞここまで、詳細に示し、家族の歴史とともに書いてくれた。父義治さんが故郷を離れて40年余り、地獄の拷問を耐えて20年、よくぞ生きて帰って来てくれた。涙ながらに、国民の一人として感謝する。深谷さん一家が生きて祖国に帰って本書を出版してくれていなければこれらは歴史の闇に葬り去られていただろう。
本書の中国での長い長い獄中の抑留生活を読んで、私は「続日本記」に出てくる、唐新羅連合軍と白村江の戦いの後、唐で捕虜生活を30年も40年も過ごして、義治さんと同じように、生きながらえて帰ってきた1300年前の日本人兵士が何人かいたことを思い出した。彼らは、帰国後、国から長年の捕虜生活をねぎらわれそれ相応の評価や褒美をもらっている。しかし、1300年後の現代、義治さんやその家族への国の対応は、全くなっていないと私は一人憤慨している。1300年前と同様に、もっと正当に評価し、経済的援助や教育援助をすべきではないかと思う。
本書は今後の日中関係を考える上でも、非常に参考になる本であり、多くの国民が読むべき名著だと私は、推薦するものである。