圧力の単位と私

平成31年(2019年)421
信州上田之住人 太田和親



(1)大気圧は、1気圧というのが、実感としてわかりやすい。101325Pa(パスカル)なんて言われたってよくわからん。我々の世代だって、これじゃあ、尺貫法に慣れていたのに急にメートル法になった父母の世代と同じ状況みたいだ。人が一食で食べるコメの量は、1合と言っていたのに、180ミリリットルと言えって、政府が言うのだ。1合の方が分かりやすいじゃないか。

さて、気圧の単位のはなし。私、大学で熱力学というのを30年も教えていた。それで気圧については、少しばかり、知っているので、以下、ちょっと知ったかぶりをしてみる。

(2)昔、大気圧中、つまり1気圧で、1端を閉じたガラス管の中に水銀を満たして水銀浴中で縦にまっすぐ立てた人がいる。そしたら、ガラス管の上の方に隙間が出来た。水ならふつう隙間が出来ないのになぜだろう。それも、水銀浴の表面から、必ず760 mmの高さまでは水銀柱があるのに、その上は隙間になっている。この隙間には何が入っているのか? その疑問を追及していて、トリチェリーという人はその隙間が真空であることを発見した。実際はごく低い水銀の蒸気が入っているが、ほとんど真空と言ってよい。それで、この真空状態をトリチェリーの真空ということになった。

サイホンの原理から分かるように、760 mm Hgの水銀柱と、大気圧が釣り合っているから、水銀の表面を大気圧が、水銀を760mmまで押し上げている。つまりそれだけの力が、大気圧というものなのだと気がついた。だから、トリチェリーは、次のように1気圧を定義した。

1気圧=1 atm = 760 mmHg = 760 Torr

だから、mmHg  = Torr(トール、またはトルと発音)である。単位Torrは発見した人のトリチェリー(Torricelliから来ている。こんなに分かりやすいのに、いまさら何で、パスカル(Pascal)なんてフランス人の名前にしろっていうのだ。フランス人のエゴじゃないかと、イタリア人のトリチェリーは思うのであった。

以上は、冗談です。

圧力の単位がパスカルなったのは、国際単位系にそろえようというのがグローバルスタンダードとなったからです。

因みに換算式は次の通りです。

1 atm = 760 mmHg = 760 Torr = 1013 mbar = 1013 HPa =101325 Pa

(3)前期高齢者になって内科のお医者さんに行った。そしたら血圧を測られ、「血圧140を超えています。高いですね。もう薬を飲みましょう。」といわれた。それで2年ほど前から高血圧の薬を飲んでいる。4週間ごとに、医者に行くと血圧を測られ、「なかなか良くなってきましたね。」と言われている昨今である。ところで血圧も140とか単位をつけずに、皆おっしゃいますが、理系の私には、単位が何なのかどうも気になって仕方がない。「140 mmHgとか140 Torr」って、先生言ってください。

眼科に行ったら、やはり「眼圧が21、ちょっと高いですね。」なって言われ、一体何の単位なのか、理系の私は気になって調べてみたら、mmHg, Torrだった。「先生、21mmHg」って言ってください。無名数で言われるとよくわからんです。







>>目次に戻る