マッサンが作ったニッカウヰスキー仙台工場の見学

2018年617日 随筆
信州上田之住人和親

ニッカウヰスキー仙台工場城峡蒸溜所を見学してきました。ニッカ創業者の竹鶴さんは、大阪大学の大先輩で醸造科(→醗酵工学科→応用生物工学コース)の出身です。NHKの朝の連続テレビ小説「マッサン」は大好きで毎回見ていたので、是非この機会に、先輩の工場を見たいと思い、出張の翌日、訪ねました。ポットスチルという蒸留装置に感動しました。ポットスチルに「しめ縄」が張ってあり、マッサンのテレビと同じでした。西洋のウヰスキーを作っていても、酒造りの心は日本です。さて、このポットスチルという蒸留装置ですが、余市では、石炭による直火蒸留をしているのが、宮城峡では水蒸気(スチーム)による蒸留をしているとのことでした。そのためポットスチルの形が余市と宮城峡では違っていること。直火蒸留だと、濃い香のウヰスキーができ、水蒸気蒸留では柔らかい味のものができるという説明でした。それぞれ風味の違うウイスキーを、味覚の優れた社員がブレンドして、あのような素晴らしい味の製品を生み出しているそうです。

私は、直火蒸留は、物理化学で習う普通の蒸留に他ならず、水蒸気蒸留は、学生実験でやったアニリンの水蒸気蒸留と原理的に同じだと理解しました。しかし、水蒸気蒸留で蒸留すると、かなり水っぽい蒸留物ができるはずなので、そんなので製品にするには、含水量をどうやって減らすのかと不思議でした。家に帰って来てから、ネットで調べると、私の理解が間違っていました。厳密に言うと「水蒸気蒸留」のように水蒸気がもろみの中に、直接入るのではなく、130℃の水蒸気がステンレスのパイプの中を巡ってもろみを間接加熱するので、科学的には、水蒸気蒸留ではなくて加熱蒸留に他なりませんでした。従って、余市が石炭による間接加熱蒸留、宮城峡は高温の水蒸気による間接加熱蒸留というのが正しい理解でした。また、城峡蒸溜所の「溜」とさんずい偏なのも、気に入りました。戦後生まれの私たちは、この字は習ったことがないので、「蒸留」には「留」を使いますが、本当は「じょうりゅう」すると滴が垂れてくるのだから、「溜」の方がイメージがぴったりです。

この宮城峡に、余市の次に、ウヰスキー工場を作ったのは、広瀬川と新川の合流地点で、極めて水がよかったからということでした。新川は、「にっかわ」と読むそうです。私は、ニッカができたので、にっかわと名付けたのかと、不思議に思いました。家に帰って来てから、ネットで調べると、創業者の竹鶴さんがここにきて、偶然、ニッカと同じ名前の川があることに驚いたそうです。偶然とはいえ、よく出来た話だなあと感心しました。「仙台のニッカは、にっかわにある。」



>>目次に戻る