日本の天皇誕生日とオランダのクイーンズ・デイ

2017年122-3日 随筆
信州上田之住人 太田和親

日本では、再来年の430日に今上陛下が生前対され、51日現在の皇太子が天皇に即位されることが、最近決まった。それで、オランダのクイーンズ・デイのことを思い出し、日本の天皇誕生日のことを考えた。

 1995年の年末から1996年にかけて半年、私はオランダのデルフト工科大学にvisiting scientistとして留学していた。年を越し、春になって、オランダの友人が、クイーンズ・デイとその日に行われるフリーマーケットのことを教えてくれた。当時、オランダの前ユリアナ女王の誕生日が430日だったので、この日をクイーンズ・デイとして、国民の休日とし、学校もお休みになっていた。この日は、フリーマーケットの日となり、普段は許可がないと国民は勝手に商売はできないが、この日は、どんな人も、大人も子供も、家にある中古品などを街の道端に並べて、売ることができる。子供は、売るものがなければ街角でバイオリンを弾いて、お小遣いを稼いでもよい日だった。だから、オランダ人は、この日は街に出たら何でも売っているよと言っていた。昭和天皇の天皇誕生日が429日だったから、オランダのクイーンズ・デイも日本の天皇誕生日も、同じように春のいい季節に祝うのが、よく似ているなあと感心した。私もデルフトの運河沿いの道端で、フェルメールの「青いターバンの少女」(別名「真珠の耳飾りの少女」)の絵が描かれたデルフト焼のお皿を、値切って買った。今も日本の自宅の壁にかけて楽しんでいる。
 それから再び2004年にオランダのデルフトを訪ねたところ、ちょうど、前ユリアナ女王が高齢になって崩御され、デルフトの教会で国葬が行われていた。国葬が終わり喪中の間、教会では一般人も参拝してよかった。それで私も昔住んでいたところがすぐ近くでよく知った教会だったので、その教会を訪ねてユリアナ女王の棺にお参りした。オランダでは、それでクイーンズ・デイをいつにするかが問題となった。オランダの友人が、クイーンズ・デイを移動させないで、前女王の誕生日の430日のままにすることになったと教えてくれた。オランダでは今のベアトリックス女王の誕生日が131日なので、今までの慣習からするとクイーンズ・デイを131日に移動することになる。しかし、真冬で寒すぎてフリーマーケットには向かない。子供が街角でバイオリンを弾くには寒すぎて風邪をひいてしまう。また寒すぎて誰も聞く人がいないだろうから、お小遣いも稼げない。道端に商品を並べるのも道が凍っていて不可能だ。それで、今のベアトリックス女王は、クイーンズ・デイを引き続き430日のままにすることを決められたとのことだった。
 私は、日本もこの例を参考に出来ないかと思った。天皇の日を、季節の良い春の429日に固定してはどうか。なぜなら、明治天皇の誕生日113日は文化の日として存続、昭和天皇の誕生日429日は昭和の日として存続、今上陛下の誕生日1223日は現在の天皇誕生日で今後も休日として存続されるらしい。また、現在の皇太子の誕生日223日は次期天皇誕生日、このままでは日本は将来、天皇誕生日で一杯休日が増える。休日が増えていいという意見もあるだろうが、オランダの例を見て、見直すことはできないかと思う。あまり話題にされないが、皆さんはどう考えるだろうか。

追記:2013年から、オランダでは国王の誕生日を祝う祝日「クイーンズ・デイ」は「キングス・デイ」に名称が変わり、430日から、現国王ウィレム=アレクサンダー陛下の誕生日である427日に変更となっている。春のいい時期でフリーマーケットには都合がよいからであろう。



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