空海の縁戚の円珍についての質問

平成31(2019)416
信州上田之住人和親

本日、H電機のN様から次のような質問があった。

空海(真言宗)と円珍(智証大師:天台宗3祖)は、生まれも讃岐で親戚の間柄だと聞きました(佐伯氏)。何故、円珍は天台宗に入り、空海(真言宗)と仲たがいしてしまうのでしょうか?この円珍という人は、空海びいきの私には真言密教をつぶして天台密教に塗り替えようとしていたかのように思えます。また、地元の香川県の皆さんは円珍の事をどのように思っているのでしょうか?先生の個人的な見解で良いのでお教えください。

N

讃岐では、信仰する宗教は、約7割の家が浄土真宗、2割が真言宗、1割未満が法華宗で、その他の宗派はほとんど聞いたことがありません。そのため、浄土真宗の親鸞や、真言宗の空海は、讃岐の人には非常になじみがあり尊敬を集めていますが、曹洞宗や天台宗の宗派の家は皆無といってよく、曹洞宗の開祖の道元や天台宗の開祖の最澄、円珍は全くなじみがありません。したがって、信州では相当に多い曹洞宗や天台宗ですが、讃岐ではその宗派のお寺も私自身はほとんど見たことがありません。高校の日本史の授業の時、先生が、家の宗派を挙手で調べましたが、浄土真宗、真言宗の家がほとんどで、曹洞宗や天台宗は皆無だった記憶があります。天台宗の最澄は歴史で習うので、それでもまだ知っていますが、円珍となると授業で習わないのでみんな知りません。

というわけで、ご質問の空海の縁戚の円珍については、讃岐では聞いたことがなく、私自身も全く知りません。

(追記)

なお、空海の母親は佐伯氏の出身ですが、佐伯氏は景行天皇の末裔で、蝦夷などを征討することに従事する氏族といわれているのはご存知の通りです。大変面白いのは、その佐伯氏がもともと住んでいる讃岐,安芸、伊勢などには、東征の折、捕らえた蝦夷をそれぞれその地に移住させて住まわせたといわれています。そのため香川県観音寺市大野原町海老済(えびすくい)は、移住させた場所だろうと地名から推定されています(参照:旧三豊郡史)。この海老済は、香川県でも秘境(讃岐では、おんごく[遠奥]という)です。

ちなみに、上田市では、私の家の宗派の浄土真宗のお寺がほとんどなく、行きつけの散髪屋さんで聞いたところ、最初、浄土真宗という名前では地元の人にはわからず、浄土真宗のことはこの地では「門徒宗」というのだそうです。それで、「門徒宗」(浄土真宗)のお寺は上田市内ではただ1ヶ所だけあることがわかりました。訪ねてみると、そのお寺の墓地には、人口がんを作成しノーベル賞候補になった山際勝三郎先生のお墓があることがわかりました。2年ほど前に、縁戚の京大総長の山極先生がこのお寺に来られて、ゴリラの研究の講演をされたので、聞きに行きました。








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