平安のミートホープ事件
信州上田之住人
太田 和親
2007年10月2日随筆
皆さん、北海道のミートホープ社の事件は記憶に新しいですね。それで、覚えている方も多いと思います。高価な純粋な牛肉と称して、安い鶏肉、豚肉、果ては廃棄しないといけないような肉などを少しずつ混入して増量させたインチキ食品を出荷していた事件ですね。値段が安かったので消費者に歓迎されて売れていたそうです。私はこれを聞いて、千年前にも同じような事件が、同じ日本であったことが今昔物語(巻第三十一、第三十一話:大刀帯陣魚嫗語)に書かれていたことを思い出して、大変おかしくなりました。私が読んで覚えている範囲では、次のような内容だったと思います。平安時代、京都の御所を警護する検非違使の詰め所に、魚だと称して、おいしいおつまみを安く売りに来る物売りの女がいました。味もなかなか良く検非違使では人気で毎回ひいきにして、酒のつまみに皆購入していました。しかし、市価に比べてあまりにも安いことに疑問に思っていた一人の男が、ある時大原の辺りに用事があって出かけていた時、野原であの物売りの女が一人何かを追って捕まえている姿を、目撃しました。変に思ったので野に潜んでながめていると、女はさかんに野にいる蛇をとらえてはかごに入れていました。女は蛇を捕まえてそれをさばいて料理し、検非違使の庁に売りつけていたのでした。男は今まで食べていた魚は蛇であったことを知ります。この話千年前のことですが、昨今のミートホープ社の話とそっくりなことに驚きます。今も昔も食に対する人間の悪事は変わらないですね。今昔物語は本当に面白いですね。