インドから日本に来た神様


平成31年(2019年)323

平成31年(2019年)331日追記

信州上田之住人 太田和親

 

最近、長谷川明著「インド神話入門」新潮社(1987)を読んで初めて知ったことです。

 

インドのヒンドゥー教には主要な3柱の神様がいて、これらの神様によって、この宇宙や世界の生成発展消滅再生が起こっているとされています。この考え方を「三神一体(トリムールティ)」というそうです。その主要な3柱の神様は次の通りです。

 

ブフラマー  宇宙創造 ヴィシュヌのへそから生まれる。

ヴィシュヌ  繁栄維持

シヴァ    破壊と再生

 

この三神の下に、たくさんの神様がおられると考えられています。したがって、ヒンドゥー教は、日本の神道と同じで多神教です。また、神道と同じで、聖書のようなまとまった教義書はなく、たくさんの土着の神様を融合合体して、広大なインドの土地に広まり現在のヒンドゥー教となっています。そのため、ヒンドゥー教は、日本の神道と成立過程が非常に似ています。また、ヒンドゥー教から仏教やジャイナ教が生まれたので、仏教に取り入れられたヒンドゥー教の神様がたくさんいらっしゃいます。仏教に取り入れられたヒンドゥー教の神々は次の通りです。これを見るとわかりますように、これらの神様はインドから日本に来た神様たちです。

 

漢訳名   ヒンドゥー教名   特徴

 

梵天    ブフラマー

大自在天  シヴァ

大黒天   シヴァの異名   マハーカーラ 日本では大国主命と融合、七福神の一人

帝釈天   インドラ   寅さん口上「帝釈天の産湯を使い・・・」で有名

吉祥天   ラクシュミー(女神)   富と幸運と豊穣

弁財天   サラスヴァティ―(女神)   技芸と財、七福神の一人

毘沙門天  クラーベ   上杉謙信の篤い信仰を得た神、七福神の一人

韋駄天   スカンダ   今年のNHKの大河ドラマの題名になっている神

閻魔    マヤ   地獄の入口で死者の生前の罪悪を審判する閻魔大王

水天    ヴァルナ  日本各地の水天宮は、元はインドの神

火天    アグニ

聖天    ガネーシャ  象の頭をした神 シヴァの息子、富と繁栄、知恵と学問の神、

障害除去(厄除け)、インドで大変人気の神

 

このほかに、戦国時代軍師で有名な山本勘助が信仰した「摩利支天」や、日本昔話に出てくる「大六天」< https://www.nicovideo.jp/watch/sm30170420>などの神様もおられます。

 

以上を見てわかるのは、日本では、「・・天」というのは、インドから日本に来た神様ですね。私はこのことを、「インド神話入門」を読んで初めて知りました。

 


2019.3.31追記

 

F先生より:私は20年ほど毎年ネパールに行っておりましたが、ヒンズーの神様の名前と顔がなかなか一致しませんでした。しかも一人の神様がいろいろと変身するのでややこしい。少しわかりかけたところです。彼らのなかではブッダもヴィシュヌの変化形の一つとされています。

 

和親:どうも、インドの神様は地方に行くとその土地の神様と合体して、最初の名前から、どんどん変わっていくようです。そうやって、ヒンドゥ教が広大なインドに広がっていったそうです。そのためいっぱい異名があるとのことです。これって、政祭一致の古代において、重要な政治的な意味があり統一国家を作る原動力になったようです。日本では、古事記などが天皇家の祖先神のアマテラスのもとに、多くの地方の神話が融合合体しているのを、明治以降学者が政治的変容だ、矛盾だ、ひどい人になると日本の神話はすべてねつ造で嘘だ(津田左右吉など)と批判していますが、私は、インドの神様の合体融合を知って、その批判は、当たらないと考えるようになりました。なぜなら古代においては、政祭一致なのでそうしないと統一国家にならないからです。

私は、10年ほど前に韓国人の中年の会社員から、日本の古事記や日本書紀は、嘘で「偽書」ですよねといわれたことがあります。それは津田左右吉の説だけを都合よく反日思想に利用しているだけだ、津田左右吉の説は困ったものだと、その時は思っていました。最近、このヒンドゥ教の神々の例もあるように、神話の合体融合はしばしばあることを知り、心強く思うようになった次第です。

 

F先生より:キリスト教がヨーロッパに広がるさいにも、土地・土地の宗教と習合しながら広がっています。しかし神話とは人びとの空想の産物なのですから、「偽」とか「ねつ造」という表現は妥当性を欠くでしょう。そうしたら文学作品はドキュメント以外成り立たなくなります。

 





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