フランス語の動詞envoyerの活用の発音で気付いたこと
令和元年(2019年)7月6-21日
信州上田之住人和親
(1)2019.7.6
昨日は、今週のフランス語講座で出て来た、envoyerの活用を復習で唱えていたところ、ふと気がついたことがあります。フランス語の活用形は14の時制ありますが、ここでは、簡単のために直説法現在形と直説法半過去形のみを示します。フランス語はインドヨーロッパ語族に属する屈折語ですから、語幹+語尾の形で語尾が変化(屈折)します。例えば、
原形 envoyer(手紙を)送る
直説法現在
1人称単数 j’envoie
2人称単数 tu envoies
3人称単数 il envoie
1人称複数 nous envoyons(ヌ アンボワイヨン)
2人称複数 vous envoyez (ヴ アンボワイエ)
3人称複数 Ils envoient
直説法半過去形では
1人称単数 j’envoyais
2人称単数 tu envoyais
3人称単数 il envoyait
1人称複数 nous envoyions(ヌ アンボワイヨン)
2人称複数 vous envoyiez (ヴ アンボワイエ)
3人称複数 Ils envoyaient
ここで、「直説法現在の1人称複数nous
envoyons 2人称複数vous envoyez」と「直説法半過去形の発音1人称複数nous
envoyions2人称複数vous envoyiez」とが、何度テープの発音[1]を聞いても同じに聞こえるのです。わかりやすくするためにカタカナで発音を示しました。
不思議でした。なぜなら、普通これらの発音は異なるからです。例えば、
原形 danser踊る
直説法現在
1人称単数 je danse
2人称単数 tu danses
3人称単数 il danse
1人称複数 nous dansons(ヌ ダンソン)
2人称複数 vous dansez (ヴ ダンセ)
3人称複数 ils dansent
直説法半過去形では
1人称単数 je dansais
2人称単数 tu dansais
3人称単数 il dansait
1人称複数 nous dansions(ヌ ダンシオン)
2人称複数 vous dansiez (ヴ ダンシエ)
3人称複数 Ils dansaient
これをみてわかる様に、普通は、「直説法現在の1人称複数nous
dansons 2人称複数vous dansez」と「直説法半過去形の発音1人称複数nous
dansions2人称複数vous dansiez」の様に、両者の語尾の綴りも違い、発音も明確に違います。
そこで、この80の代表的なフランス語の動詞[1]をくまなく発音をテープで聞いてみると、発音が同じなのは次の様な単語でした。
Payer
Employer
Ennuyer
Envoyer
Pourvoir
Croire
Prévoir
s’assoir
Voir
Cueillir
Assaillir
Bouillir
Rire
Fuir
これらはみんな、語幹の発音が[j]または[i]で終わるものばかりということに、私は昨日初めて気がつきました。つまり、envoyerの「直説法半過去形の発音1人称複数nous
envoyions2人称複数vous envoyiez」や、rire「直説法半過去形の発音1人称複数nous
riions2人称複数vous riiez」の様に、語幹の発音が[j]の後に語尾ions,
iezが来ると、語幹の最後のイと語尾の最初のイが二つ重なるのを避けて一つのイしか言わないという規則があることがわかります。それでこれらは語尾の綴りが違っても、発音が例外的に同じになるのです。
私の持っているフランス語の本を見る限り、これらの発音が同じになるというのは書かれていないですが、個人的には大変面白い規則だと思います。
(2)2019.7.11 ネットによる検索
やはり世界は広くて、私と同じ疑問を抱く人がいてそれぞれ過去にネイティブに、同じような質問していました。
添付のような回答を得ました。
Envoyons et envoyions
Pyayons et payions
Etuions et etudiions
の発音の違いは、これらを見ると、
(1) iとiを二つ重ねて少し長めに発音する。
(2) 事実上、同じ発音である (カナダ人)
(3) 同じ発音でいい。聞いても違いはない。少し伸ばせばいいか。(フランス人)
実際、私の持っているフランス語のテープ[1]を改めてじっくり聞きましたが、私には同じに聞こえます。
したがって、イ、イと二拍にして発音はされていないようです。
明日、フランス語講座でフランス人のY君の発音も聞いて確かめてみたいです。
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(3)2019.7.21 私にはやっぱり同じに聞こえる、envoyonとenoyionsの発音
先週の金曜日のフランス語講座に、私の持っているフランス語動詞活用のカセットテープ[1]を、パソコンに移して持って行きました。クラスみんなで、直説法現在形nous
envoyonsと半過去形nous envoyionsの発音の違いを聞きました。私は、全く同じに聞こえるのに、後の4人は違うと言うのです。現在形はアンボワイヨン、半過去形はアンボワイイヨンと発音されていると言うのです。ほんまかいな。多数決で、発音が違うと言うことになりましたが、どうも私だけ納得がいきません。それで、ネットでも発音を実際に音声で示しているホームページがないか調べてみました。
http://conjugator.reverso.net/conjugation-french-verb...
これでenvoyonとenoyionsを聞いたら、やはり、全く同じに発音されています。
そこで、他の例、payonsとpayions,
cueillonsとcueillions,
rionsとriions, voyonsとvoyionsなど、私がフランス語動詞活用のカセットテープで、同じに聞こえるのをすべてチェックしました。全て、同じに聞こえます。ただ一つ、確かに、発音が違う例が見つかりました。それは、étudionsとétudiionsです。これは確かに、エチュディヨンとエチュディイオンと半過去形はイを重ねて長めに言っています。あとのは、私のカセットテープ[1]と同じで、現在形と半過去形の発音の違いはありません。
それで、私の耳がおかしいんじゃないと私は確信しましたが、皆さんも聞いてみていただければ幸いです。
(追伸)
http://conjugator.reverso.net/conjugation-french-verb...
の使い方はすぐわかると思いますが、念のため、述べます。
(1)
左上の空欄のところに、envoyerと打ち込む
Présentの下のnous envoyonsにカーソルを持って行くとスピーカーのマークが出てくるので、これをクリックする。
次に、impartaitの下のnous envoyionsにカーソルを持って行くとスピーカーのマークが出てくるので、これをクリックする。
(2)
左上の空欄のところに、étudierと打ち込む
Présentの下のnous étudionsにカーソルを持って行くとスピーカーのマークが出てくるので、これをクリックする。
次に、impartaitの下のnous étudiionsにカーソルを持って行くとスピーカーのマークが出てくるので、これをクリックする。
私には、(1)は全く同じに聞こえ、(2)は確かに半過去形のイが長めに聞こえます。したがって、私の結論は、ほとんどの場合カナダ人のいう 「事実上、同じ発音である。」です。
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[1] 窪川英水「フランス語活用ハンドブック」、第三書房(東京)、1986:ISBN-10: 4808602059