フランス語のアルファベットは、読み方が少し違う

2018年613日 随筆
信州上田之住人和親

自己紹介の後、フランス語のアルファベットで、自分の名前の綴りを言ったり、相手の綴りを聞いたりする練習がある。そこで、久々に、フランス語のアルファベットの読み方が少し違うことで、戸惑うことがあった。

 Eはイーではなくてウー。Iがアイではなくてイーなのだ。片仮名で発音を書くと正確ではないが、まあ、こんな具合である。また、Gがジーではなくてジェー。Jがジェーではなくて、ジーなのだ。まるで反対である。だから、フランス人から名前の綴りを聞くときには、イ―とかジェーとかいわれると私は無意識のうちにEとかJとか書いてしまうので、フランス人に違うといわれて初めて気がつく。英語に慣れていると、混乱する。

 Yは、ワイではなく、イグレックと読む。31年前には、なぜだか理解しないままそういうものかと思って、教えられるまま覚えていたが、最近、31年ぶりにフランス語の勉強を再開して、どうしてそう読むのか初めて分かった。

教科書のMauger Blue I巻の99ページの演習問題に、フランス語で、71の国名が書いてあって、それに対応する形容詞を書けというのがあった。英語で言うと、JapanといえばJapaneseと答える問題である。ところが、皆さんご存じのように、フランス語の名詞には女性と男性の性があるので、名詞は性別を覚えなくてはいけない。だから面白いことに、国名にも、男性の国と女性の国があるのだ。その国に女性が住んでいても男性の国ということになる。なんだか日本人には不合理な気がするが、仕方がないので71の国の性別を、辞書で全部調べながら、この演習問題を解く。さらに、厄介なことに国名の形容詞は、男性名詞につくときと女性名詞につくときで、それぞれ形と発音が変わる。これも調べてすべて覚える。性別と形容詞を辞書で調べるのにすごい時間がかかってしまったが、新しい発見が4つほどあった。

その一つが、イグレックである。

ギリシャのフランス語は、Grèce(グレース)、その形容詞はgrèc(グレック)である。フランス語の形容詞は名詞の後におくのが普通なので、私は、この時、イグレックって、「ギリシャ語のイー」っていう意味じゃないかと、はたと気がついた。それで、ネットで調べたら、はたしてそうだった。31年間もぼんやりしていていままで気がつかなかった。また、このY、国際発音記号で使われた時には[ y ]と書かれて、[ i ]とは違う発音であると教えられる。[ y ]はウの口をしておいてイ―と発音する。[ i ]は日本語よりも口を横に引っ張ってイーと発音すると教えられる。まあ、[ i ]は日本語のイ―と大差ないように聞こえるのが、この[y]は標準語では聞いたことがない。しかし、私は、広島県人がこの発音をしていることに気がついた。広島県人は、「あの看板、見にきぃーんじゃ。(あの看板、見にくいんです。)」と言ったりするとき、口を細めて口をとがらせイ―と言っている。広島県人の友達に、「みにのイと、きぃーじゃのイは違うね」と言うと、何度か発音してみて、本当だねと言っていた。だから、私は、Yはイグレック「ギリシャ語のイー」ではなくて、i-hiroshimain(イイロシマン)「広島弁のイー」と、ひそかに名付けてほくそ笑んでいる。



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