フランス語bs/bt の清音化

2018年122日 随筆
信州上田之住人 太田和親

今日フランス語を勉強していたら、今までちっとも気づいていなかったことに初めて気づきました。

Il est absent aujourd’hui. (= He is absent today.)という例文を、CDでその発音を聞いていたら、イレタプサン/オジョデュイ と確かに発音されています。イレタブサンと濁らないんだと、不思議に思い、何度も聞いてみてみましたが、濁っていません。今まで、無意識に英語と同じつづりなので、アサンと発音していましたが、違うらしいです。それで、今日、詳しく調べてみました。私のフランス語の辞書の前のほうに綴り字と発音の詳しい説明があるのですが、そこを読んでも全く、そのようなことは載っていませんでした。そこで、詳しいフランス語文法の本を見てみると、この本だけには、わずか1行、b+s[p]になるとありました(目黒ら、「新フランス広文典」、白水社p.33, 1985)。もっと詳しく知りたかったので、インターネットでも調べてみました。

そしたら、http://www.akenotsuki.com/latina/litterae.htmlに、ラテン語のつづりと発音について解説があり、この解説から、ラテン語ばかりでなくフランス語でも「bs/bt の清音化」という現象があることがわかりました。それで、この解説と自分のフランス語辞書からくまなく単語を拾って、次のようにまとめてみました。

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フランス語bs/bt の清音化

フランス語では、例外的に bs/bt という並びのつづりは、まるで ps/pt であるかのように発音する。つまり、bsbtのつづりは、[ps][pt] にそれぞれ発音する。これは後ろの S/T の影響で B が無声化したものである。(日本語で言うところの清音化が起こる。)

bs→psの例:

absent, absolu,absolument, absorber, abstraction, abstraire

obscur, obscursir, obscurité, observer, obstacle

bt→pt例:

obtenir, obtention, obturer, obturation

これらはラテン語からの影響のようである。

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今まで、こういうフランス語にも清音化があることを、全く知りませんでした。

なんでも、勉強を続けてやるものです。今まで、見過ごして気づかなかったことがわかり、面白いです。

ちなみに、日本語では、外来語で濁音の清音化が起こりやすいといわれています。たとえば、プロ野球チーム「阪神タイガー(Tigers)」とみんないっているが、英語で正しくはタイガー;ビッマック(Big Mac)を、ビッマックという人が多い、などです。

日本語でも、フランス語でも濁音の清音化があるのが面白いですね。



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