センター入試と焼芋の美談
信州上田之住人
太田 和親
2007年1月22日随筆
皆さん、センター入試大変お疲れ様でした。2年前から英語にリスニングテストが加わりその対応にために膨大な対応要領を事前に頭に入れておかねばならないので本当に大変でしたね。特にタイムキーパーの役に当たっていた私は、事前に一生懸命事故対策要領を読みました。そのなかに、物売りの声がしたときは、救済処置はとらないという項目を読んだとき、十数年前の焼芋の美談を思い出しました。
十数年前からでしょうか私立大学もセンター入試に参加するようになって、受験生が膨大となり、信州大学繊維学部では、収容しきれなくなりなりました。今は長野大学も会場になっていますが、当時は東信地区で、センター試験の試験会場は繊維学部ただ1ヶ所だったのです。そこで、収容しきれない分、隣の上田東高校も借りて二ヶ所でセンター入試をやることになりました。そのため繊維学部の教職員を二つに分け二会場二本部制とし、松本地区の先生方も応援に来てもらってセンター試験をやっていました。当時全国の大学で、センター入試の負担が一番重いのは、信州大学繊維学部と琉球大学だといわれていました。十数年前、その東高校でセンター入試をやっていたときの話です。
御存知のように東高校の前の道を隔てて、スーパーつるやがありますが、東高校でセンター入試をやっているときに、つるやの前の駐車場入口に焼芋屋さんの屋台が来て、留まってピーという大きな音で客集めをしていました。非常に大きな音で、すぐ前の東高校の建物ではセンター試験を多数の受験生が受けていて、大迷惑になっています。しかし、なかなか焼芋屋さんは立ち去らず、警備の人も、営業妨害になるのであっちへ行けとも言えず困っていました。そのとき東高校の試験会場の責任者であった入試委員長の左納先生が、その焼芋屋さんに、センター入試の邪魔になるから、やはり立ち去ってもらうことにしました。左納先生は、自腹で3万円を出して、全部の焼芋を買いました。営業妨害は出来ないので、自分が全部焼芋を買うから立ち去ってくれと言ったのです。皆さん美談だと思いませんか。文部省から焼芋代なんか出ないので、左納先生は自腹で出したのでした。それも、繊維学部の学生のためではなく、見ず知らずの東信地区の多く高校生のためなのです。私は大変、美談だと思っていますが、現在お勤めの教職員の大半の方々はこの話を、御存知無いようなので御紹介した次第です。
昨日センター入試で同じ試験室の監督になった方にお話したら、「それは本当にいい話ですね。しかし、そんな大量の焼芋を左納先生そのあとどうしたんですか。」と聞かれました。皆さんどうしたとおもいますか。左納先生は、寒い中外回りの警備をしている警備担当の教職員の皆さん全員に、その焼芋を届けたのでした。温かい焼芋の話です。
私は、今回、「物売りの声がしたときは、救済処置はとらない」という対策要領を読んだとき、十数年前の焼芋の美談を思い出しました。そしてあの時の左納先生の四角い顔を私は思い出しました。左納先生は退職されて、いまはもう十年くらいになるでしょうか。