K先生へ科研費のこと

2017824日
信州上田之住人和親

N大のK先生が、科研費の申請書書きでお疲れのご様子。今の時期、みんなN先生のような気持ちになりますよね。

私は、今年の3月末で科研費が切れたのですが、今年、科研費を申請することが制度上できないということが分かり、困ってしまいました。あと1年半で、定年退職ですが、定年前2年になると科研費に出せる項目がないということに気づきました。

私は4年前から「Flying-seed型液晶」で基盤研究Bに申請し続けており、4年前は評価Aでも採択されず、次の年の3年前は学内のアドバイザーを使えと言われアドバスを受け入れてその通り書いたのですがどうもインパクトが半減していると思ったら、評価はBに格下げになり採択されませんでした。ええい、アドバイザーなんか役に立たないと思い、次の年の今から2年前はアドバイザーに意見なんぞ聞かずに思いっきり書いたら評価はAに戻りましたが、やはり採択されませんでした。理由は、研究組織が弱いということでしたが、今地方大学の教授は、部下は全くおらず、私は准教授も助教もいないたった一人なのに、組織を作れといったって困ってしまいました。今の地方大学じゃあ、きわめて斬新な個人のユニークなアイデアに、メインの仕事として一緒にやってくれる他人などいるわけがなく、旧制帝大出身者らしい審査委員の意見で落とされた理由に納得いきませんでした。それで1年前の昨年は、今度こそ何とか通るようにと、さらにもう一度に基盤研究Bに出そうとしましたら、制度上3年以上でないと受け付けてもらえない。基盤研究A-Cはどれも、1年や2年の短期は受け付けない。定年まで2年というのはだめらしい。それで、出せるところを探したら、萌芽的研究しかない。これは1年でも2年でも受け付けると書いてあった。そこへ申請したら、今度は申請内容が変わらないのに、評価が、なんとCになって、またまた採択されなかった。世界初のことをやろうとしているのに、審査委員はちゃんと読んどるのか?!昔、萌芽研究の審査をやったことのある知り合いの先生に聞くと、萌芽研究は自分の専門以外の申請もわんさか来るので、専門外で読んでもわからない申請はみんなCになるだという。独創性を重視した今までにない研究を申請してほしいとうたって萌芽研究は募集しているのとちゃうんか!評価体制がおかしいんちゃうか?!と怒っても、制度上出すところが他になかったので仕方がない。そういうわけで、これまでこの研究提案の4年間の評価はA→BAC。こんなに独創的な研究を提案しても、どうしてもこんな具合で通らない。今年は、このような事情を大学の科研費担当の事務方に聞くと、「先生、萌芽研究は来年から2年以上になりましたので、もう1年では出せません。」万事休す。もう、科研費は出すところがなくなった。落胆する私を見て事務方は、「しかし、定年後どこかで雇ってもらえることが決まっていたら、基盤研究出せますよ。」と同情しながら言ってくれた。しかし定年2年前から定年後雇ってあげると正式に内定してくれるというところなんかあるわけないので、もう科研費は、書けん!ということになりました。

それで、定年までの今年と来年は、大学からの1年間の運営交付金の35万円でやることになったのです。学生一人あたり30万円の消耗品代がかかるのですが、学生院生が8人いて、不安で仕方がない昨今です。以前残しておいた貯金(寄付金)で何とかやっています。正直、この貯金が安心感になっている。

戦後、「こんな女に誰がした」という歌がはやりましたが、今大学の先生方は、「こんな大学に誰がした」と思っています。20032007年の小泉首相や竹中平蔵氏提唱の路線、「大学も規制緩和して多くの大学に競争させて生き残る大学だけ生き残ればいいんだ、そうすればよりよい大学だけが残る。」このサバイバルゲーム路線の間違いじゃないでしょうかね。大学が15年くらい前は400だったのに今じゃ800もある。嘘800ではない、現在本当に800に大学が増えたので、そのすべてに、文科省から交付金出していたら、そりゃあ、大学の先生一人当たりの交付金は雀の涙になるだろう。高等教育の国の経営戦略の失敗じゃないかと思いますね、私は。私学は、それでも新聞に、国立大は恵まれている、私立大は、こんなに貧乏していると言っていますが、もう地方の国立も貧乏です。極貧です。皆さん、よくわかっていないみたい。元文部大臣だった田中真紀子さんじゃないけど、正直、大学の数多すぎないか。

K先生、研究費に対する悩みは多いですね。私はあと1年半で定年ですが、先生はずっとお若いので、心身ともに健康で、サバイバルゲームに生き残ってください。



>>目次に戻る