全国の国立大学総額2兆8千億円の大借金の理由
2005年9月21日
信州上田之住人和親
文科省のホームページに平成17年8月29日に発表された「国立大学法人の平成16事業年度財務諸表の概要(説明本文)」を見たある方から、何故、国立大学は総額2兆8千億円もの負債(借金)を出したのかと、国立大学の将来を心配して、次の様な質問が、個人的に私の所に、来ました。
(質問)予算の件ですが,先ず変に感じるのは,どこもそうですが,どうして借金が可能だったのでしょうか?しかもそんなに多額の?本来,特に旧国公立大学では,予算の年度繰越も年度を越えた借金も出来ない仕組みになっていたのではありませんか?したがって,常識的に考えれば,貸した業者にも応分の責任があるので,適当な割合で負債を免除してもらう交渉をすべきでしょう.あちこちの自治体でも,バブル期の放漫投資で出来た負債を銀行等で棒引きしてもらっているではありませんか.無責任な行為によって発生した負債のために,多くの善良な研究者・教育者が路頭に迷うような事になってはいけません.ぜひ,棒引き交渉を提案してみて下さい.
(私なりの回答)御質問の何故こんな大きな借金が出来たのかですが、実は学内の誰も知らなかったのです。おっしゃる通り、個人に配分された、校費や科研費その他は年度内使い切りの予算ですから、年度を繰り越すことは出来ず、借金ができるはずがありません。そのため、おそらく全国の国立大学の先生方は、総額2兆8千億円もの大借金があることを知れば驚くはずです。うかつなことにほとんどの先生が、大借金があることさえ今も知りません。その上、信州大学では学長も、財務部長も誰も学内で、説明しないのです。それで、インターネットで調べると、2年前の国会で質問した議員のホームページから判明するのは、各国立大学の大学病院が毎年巨額な赤字を出していたことがわかります。これは、国立大学の大学病院が、高度医療を開発する使命を果たしていたからです。信州大学の医学部は、臓器移植などで大変活躍していましたので、これらの費用が、財政投融資から資金として大量に供給されていたようです。これが主要な大借金の原因のようです。国立大学医学部はもうかる体質には出来ていません。もし、生体間移植の費用が1件1000万円もかかるのを、全て患者個人に背負わせるとなると、金を出すか出せずに死ぬかということになります。これらは今迄全て、医学部の研究費で賄われていました。国家として高度医療を開発するためという理由です。だからもうかる体質には出来ていないのです。私立病院のように儲けろと言われると、このような高度医療の開発は国立大学病院では不可能となります。誰も借金は嫌いでしょうが、これは国民的な問題であり国民全体で考えなければならない問題です。
しかしながら、この大借金を含めこれらの問題が、学内で明確に発表も認識もされていません。大借金を明らかにすると色々と都合が悪いので、官僚や学長が隠しているのではと思います。学内でこの大借金の返済に対して、合意が得られていないので、明らかにすると、責任のなすりあいになることを恐れているのではないでしょうか。しかし、医学部以外の学生や教員までもが先々もっと苦しくなり、研究教育に支障を来すと予想されますので、早い時期に学内を含め国民的議論を喚起すべきだと私は思います。善良な学生や教員が、国策の犠牲になるという構図は、国民全体で考え直さなければなりません。