昨今の半日や一日のインターンシップについて所感

 

平成27年(2015年)14日随筆

信州上田之住人和親

 

インターンシップでは、就職協定上就職とは関係ないということになっています。就職協定を骨抜きにするような、今のインターシップを大いに憂います。日本の企業はいつから、このように破廉恥になったのか。それも日本を代表する大企業までが、半日や1日のインターシップを今盛んに募集しているのは、嘆かわしい限りです。

 私は今大学の就職委員長をしております。大学生や大学院生にじっくりと勉学に励むように安部政権が40年前の就職協定に引き戻したのは、私は大いに賛成しております。昨年までは、3年生から就職活動を出勉学に身が入らず、なかなか内定が出ない人は1年半もの間就職活動をしていました。そんなことをしていたら、学部生は勉強に身が入りません。4年生の秋まで決まらない人はもうほとんどノイローゼ状態です。1社に対し5回も呼びだされるのですから、50社平均受けたとしたら250日、毎日行けるわけないし、エント リーシートや履歴書は直筆で書けというのですから、ものすごい時間をかけています。学生が気の毒なくらいです。勉強できないような就職事情に世間がしておいて、入社した学生が勉強していない、質が悪い、ちゃんと製品(学生)の品質保証ができていない、今の大学はけしからんと、企業は言いたい放題です。私は就職委員長として、勉強させていないのはこの就職活動のせいだという認識をもっと世間一般が持ってもらい たいです。私が、大学に入学した1972年には、就職協定がなく、4年生はみんな3年生の時に就職活動して内定していました。あの頃1,2年生は一般教養 で勉強せず、3年生の専門に上がっても3年生のときは就職で勉強せず、4年生になったら、もう就職決まっているので、勉強していませんでした。語弊を恐れずに言うと、私のすぐ上の人たち、つまりいま65歳から75歳くらいまでの人たちは、学生運動が激しかったのと、このような青田買いのため、ほとんど勉強せず、大学できちんと勉強しておらず学力が非常に低い世代です。民主党の時の首相達を見てください。彼らの実力が皆さんわかるでしょう。今このような人達が、社長や部長をしているので、彼らは大学は遊んでいて卒業できると信じているようです。

 1974年ころに日本人の学生のあまりにも学力がないことに危機感を抱いた当時の学識経験者たちが、経団連に話して6月解禁10月内定という就職協定を作りました。それから20年ほどこの就職協定が守られ、学生も勉強するようになりましたが、またも、三菱マテリアルの会長をしていた方の鶴の一声で、就職協定がつぶされてしまいしまいました。「俺は、大学で勉強しているより、直島の精錬所で工場実習していた方がよっぽど勉強になった、だから就職協定なんかいらない!」という主張でした。みんな過去を忘れてしまうのです。それで1972年以前の状況に後戻りしてしまったのです。そしてまた20年ほど経ち、学生がまた勉強に集中できない就職事情となってしまいました。なぜ、三菱マテリアルの会長の一人の意見でこのような状況に後戻りするのか、当時私はいきどおりを覚えていました。安部政権が、せっかく1974当時の立派な就職協定に戻したにもかかわらず、2015年の就職協定は、早くも、1日や半日のインターンシップなどという、インターシップ(企業実習)とは名ばかりで、全くインターンシップを隠れ蓑にして、実質就職のための企業説明会や面談を行っているのは、協定違反でしょう。日本の企業は、ここまで倫理観がないのか。猛省を求めます。

 インターンシップとは本来、工場実習や企業実習を意味し、就職とは関係のないというのが、表向きです。半日や1日で工場実習や企業実習できるわけないだろうと思います。私が東芝の総合研究所にいたときに、長岡技術大学からの大学院生を3カ月、研究所で預かって実習させていました。これは本当に実習(インターンシップ)でした。今もインターンシップでは、協定上就職とは関係ないということになっています。就職協定を骨抜きにするような、今のインターシップを大いに憂います。日本の企業はいつから、このように破廉恥になったのか。それも日本を代表する大企業までが、半日や1日のインターシップを今盛んに募集しているのは、嘆かわしい限りです。日本人よ、もっと立派な侍になれ。


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