手織り 上田紬 りんご染め    

りんご染め


まずは自己紹介

りんご染めのページをご覧くださりありがとうございます。
ここではりんご染めを始めるようになったきっかけについてお話しさせて頂きます。
申し遅れましたが、私は小岩井紬工房の三代目で代表をしております小岩井良馬と申します。
良馬はりょうまと読みます。 そうです、幕末の偉人坂本竜馬から頂きました。 

20代の頃は名前の影響があってか海外志向が強くドイツで3年間、日本食レストランで働きながら暮らしておりました。 
その後、家業である上田紬の織元の仕事に従事しております。
2017年2月に伝統工芸士に認定されまして、ますます精進して参りたいと思っております。
私についてもう少し深くお知りになりたい方は、ブログ「上田紬の伝統工芸士 リョウマがゆく!」をご覧ください。

ドイツ時代にスイス人の友人宅でチーズフォンデュをご馳走になっている時の様子です。
白ワイン入りのチーズフォンデュを白ワインを飲みながら頂いたので顔が真っ赤っか・・・。


上田紬の特徴って?

さて、普段私は信州上田の片隅にある小さな工房で両親と姉と数人の織り子さんと上田紬を制作しているのですが、工房では見学もして頂けますので時おりお客様がお見えになります。
工房見学にお越し下さったお客様からのご質問でおそらく一番多いのが「上田紬の特徴は何でしょうか?」という田中マー君もビックリ?な直球ど真ん中のストレートなご質問です。
 
昔から言われている上田紬の特徴は「丈夫な事」と「縞・格子柄」です。 
「丈夫な事」については三裏紬(裏地を3枚変える程表地の上田紬が丈夫な例え)と呼ばれるほどでしたし、「縞・格子柄」も江戸時代には井原西鶴の浮世草子「日本永代蔵」に名前が登場するぐらい人気でした。

明治時代の上田紬の縞見本帳です。 化学染料が普及する前は藍染めがメインなので紺色の生地がほとんどです。



新しい上田紬らしさ

工房にお越し下さったお客様に「上田紬の特徴は丈夫な事と縞・格子柄です」とご説明すると、多くの方はあまりピンとこない表情をされます。
正直なところ、説明している私もいまいちピンときていないのですからお客様がそう感じるのは至極当然だと思います。
なぜなら「丈夫な事」と「縞・格子柄」は上田紬だけの特徴ではないからです。

例えば丈夫な事は、和歌山県九度山町で生まれた真田紐や北九州市の伝統工芸・小倉織などでも丈夫さを売りにしていますし、縞・格子柄に至ってはどの産地、と言うより全世界で作られています。。。
お客様に上田紬の特徴をご説明する度に、何かもっと上田紬にしか表現出来ない上田紬らしい特徴を作り出せないか?と考えるようになってきました。

上田紬の証紙には真田家の家紋、六文銭が用いられています。 真田紐とは真田家ゆかりの織物であるという共通点があります。

草木染めとは?

ところで私には上田紬の特徴と同じように悶々としている事柄がありました。 
それは草木染めについてです。
草木染めとは野草や木々などで染めるいわゆる植物染料というのは皆さんご存知だと思います。
ですが、草木染めには明確な基準というものが設けられていないので、産地や織元によって基準がバラバラなのです。
良心的な産地や織元では(と言うかこれが本来当たり前だと思うんですが)使用した染料をしっかりと明記しています。
ですが、どこの産地で作られたか分からないような商品になると、草木染めが1%でも入っていれば堂々と草木染めと謳って付加価値を付けて高く販売されていたりします。
草木染めというブランドイメージを売りにして着物ファンを騙すような一部業界のやり方を腹立たしく思い、そういうところと上田紬は一線を画したい気持ちが常にありました。

染色している様子です。 染液が煮立つまでムラにならないように糸を何度も返していきます。


上田紬らしさ×草木染め=りんご染め

小岩井紬工房では創業当時は草木染めも力を入れてやっていましたが、近年は化学染料が中心となっています。 私が仕事を始めて2、3年経ってから草木染めを復活させようと思い、当初は工房裏山の畑の梅、千曲市の果樹農家さんから頂いたあんず、そして上田市の林檎農家さんから頂いたりんごなど色々な草木を用いて染めていました。
草木染めをやっていくうちに同じ植物でも媒染や分量、そして採取した季節や場所でも色が変わる事を知り、1つの植物だけで色の違いが出せる事が分かりました。

信州上田の特産品である林檎に特化して色の違いを染め分けてデザインを作ったら上田紬にしか出来ない上田紬らしい特徴になるのではないか!?と思い、名前も草木染めではなくてりんご染めとして創作するようになりました。

りんご染めは林檎の樹皮を削って乾燥したものを煮出していきます。 


りんご染めの可能性

りんご染めに特化するようになって数年経ったある秋の事です。
洋菓子屋さんへ行くと美味しそうなアップルパイがショーケースに並んでいました。
「あ、そう言えばアップルパイは紅玉という林檎の品種を使っているんだったな〜。 あ、もしかして林檎の品種でも色の違いが出せるかも?」と思った事がきっかけで、品種を分けてりんご染めをするようになりました。

それまではふじの品種だけで染めていましたが、長野県オリジナルブランドのシナノゴールド、シナノスイート、秋映でも染めるようになり、りんご染めの色の幅がまた広がりました。
まだ他にも染めてみたい品種もあり、りんご染めの可能性はまだまだあります。
新しい上田紬らしさとしてこれからもりんご染めを磨き上げていきたいと思っています。

工房やどこかの展示会で上田紬のりんご染めの作品をご覧頂いた時には、りんご染めの色彩の素晴らしさと作り手としての思いも感じて頂ければ嬉しいです。

写真左から秋映、シナノスイート、シナノゴールドの品種で染めたものです。